映画 風立ちぬ

2013/07/22

映画。

t f B! P L
みなさんおはよーさんなのだ。



昨日は二人で楽しみにしてたスタジオジブリ最新作『風立ちぬ』を見に行ったのだ。


頑なにアニメは子供のために作られるべきだと言っていた
宮崎駿監督がなぜ風立ちぬを題材に選んだのか。


そのプロットは2009年ごろからできていて、
総合模型情報誌に漫画としてすでに発表してたのだから監督の思い入れは半端ないのだ。



物語は。九六式艦上戦闘機や零式艦上戦闘機(通称:ゼロ戦)を開発した設計技師・堀越二郎の
飛行機へのあくなき夢への半生と、サナトリウムへ転地療養した婚約者にまつわる実体験から
書かれた堀辰雄の同名小説『風立ちぬ』の純粋なまでの愛が絶妙なバランスで織りこまれていく。



・・・・・・・



関東大震災で当時の帝都が壊滅したのが1923年、そこから第二次世界大戦開戦まで
実に十余年あまりしかないというのがなんとも不思議な気がするや。



青年二郎が生きた時代、そこは閉塞感が漂い生きること自体が困難な激動の時代だったのだ。



ウォール街に端を発したアメリカの恐慌はたちまち日本にまで波及し昭和恐慌は、
混乱する日本経済を危機的状態にまで陥らせてしまったわけで。



そこから熾烈を極めてゆく病気や貧困、失業や労働運動・・・
人類史上最大の戦争へたどり着くまで日本人が歩んできた道は
そうとうに過酷なものだったと想像に難いや。



人間てのは厄介。単純に善か悪かで括る事ができない。



満天の星空、山の裾野にかかった夕日、

木の電信柱が立ち並ぶあぜ道、

煙をあげて走る蒸気機関車、広がる美しい田園風景・・・・・



この世はこんなに美しいもので溢れている・・・
頭上を見上げれば、無限の大空が続いていて
いつ果てるとも知れぬそんな命を人は今日もまた必死に繋いでいくのだ。



『創造的人生の持ち時間は10年だ 君の10年を力を尽くして生きなさい』
人にはどうしても成し遂げなければならない、輝ける十年間がある。


青年はただ一心に美しい飛行機を作りたかった。
妻はただ飛行機に打ち込むそんな夫を傍で見ていたかった。



時は戦争の時代。高性能の兵器を作ることが何よりも最優先とされた時代に、
零式艦上戦闘機など後世に語り継がれる名機の設計を手掛けた二郎。



そこに派手な戦闘シーンや人殺しの道具を作ったことに対する糾弾はなくて、
『美しいものを作りたかった』という純粋な夢を忠実に再現した描写が
ただ真っ直ぐにスクリーンの中で続いてくだけ。



美しさへの憧れ、その代償は破滅への狂気。



きっと監督は。はなっから批判は承知だったに違いなくて、
そのうえで、細かな心理描写やありとあらゆるモノを削ぎ落としてまで、
全編を通して宮崎自身が見ている人たちへ伝えたかったことがあるんだと思うんだ。



それは『力を尽くして生きなさい』これに尽きるんじゃないかと。



今いるこの場所で力を尽くして生きることは、人間の基本的な時間の概念や
幸福感の価値をきっと大きく変えていくんじゃないのかとボクは思うんだな。



旧約聖書・伝道の書の一節
『凡て汝の手に堪ることは力をつくしてこれを爲せ 其は汝の往んところの陰府には
工作も計謀も知識も智慧もあることなければなり』からこの言葉はキテるんだ。



主人公の堀越二郎氏の飛行機の開発に対峙する姿勢と、
監督のアニメーションに対する真摯な姿勢は否が応でもダブってしまったりして。



そして『自分が本当に作りたい作品よりも、アニメは子どもが見るために作られるべきだ」
という矛盾を抱えながら生きてきた宮崎駿の人生とリンクするのはなんとも感慨深いのだ。



死の影を予感しながらも夫に寄り添い、残された時間を愛しい人に触れていたいと願う…
初々しい菜穂子のそんな姿を見ると、自然と心の中にアツいものがこみ上げてくるや。



人生の幕を閉じるとき、静かに次郎の前から消えた菜穂子に対して
黒川夫人が『綺麗なところだけ見てもらったのね』と悲痛な面持ちで言った途端、
ボクはめっちゃ号泣してしまったや。


なんて健気で、なんて儚いんだろうな。


最後のシーン、草原には墜落した多数の零戦が目の前に横たわっていて・・・
敗戦後とおぼしきその風景は哀絶に満ちながらも幻想的な空間を醸し出していたりするのだ。



と突然、二郎の目の前に菜穂子が現れて『あなたは、生きて』とメッセージを託したりして。
それは彼の目を通して菜穂子の魂が伝える最後の愛だったんではないかななんて。



そして、
零戦に乗って帰って来れなかったたくさんの人たちを厳かに空へ見送ったところで。
『堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて』という言葉とともに映画はエンディングロールとなり・・・。



・・・余韻がもの凄くてしばらく立ち上がれなかったくらい、
ジブリらしからぬ、それでも、もの凄くジブリらしかった作品だった気がしやす。



単にストーリーを追うだけじゃなく、意識の共有が飛行機を通して1つの意識体として機能
していくアイデアや、人間の声で効果音を作るという斬新なアプローチ、現役を引退してた
色彩設計の保田さんの再登板などなど、その技術の結集を見るだけでも見どころは尽きないや。


また。過去のジブリ作品のモチーフがあちこちにちりばめられているので、
ファンとしてはスクリーンの中の元ネタを探すだけでもコレは面白いんじゃ?と思いやしたぜ。



『風立ちぬ、いざ生きめやも』



映画を見たあと、相方さんが手を握りながら俺より先に死んだらダメだぞ
って言ってくれて、それはもう嬉しくてきゅんきゅんしちゃったや。



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