夕闇も差し迫るころ、相方と逢って久しぶりにとまともな話をしたんだ。
薄暗い部屋の中、灯りを点けることさえもどかしく感じたのか彼がいきなり話し始めた。
お前ってさー、俺より人間ができてると思う。エライと思う。
俺の家族にいっぺんで受け入れられて、溶け込めるのも本来ありえんと思う。
料理は美味いし、洗濯もんたたむのうまいし。人あたりだっていいし。
・・・・・相方は急に思い出したように、ボクのコマゴマしたことまで褒めはじめた。
この10余年あまり、相方に褒めてもらった記憶がボクにはまったくないから驚いたや。
事あるごとに、だからお前はダメなんだと、相方はボクのありとあらゆるものを貶した。
ボクはそのせいなのか、なんとなく自分に対して強い劣等感を持つよーになっていった。
相方はボクよりも一周り以上も年上だし、ボクから見たら十分に大人の男でした。
相方の言うことを聞いてれば、それが正しいんだ、ボクはいつだってそー思っていた。
でも、仕事のストレスで常に怒ってばっかの相方の不機嫌なそぶりに、
いつしか、どんなときも意識を奪われ続けるよーになって、それが凄くストレスになってて。
そして気がつくと、嫌われることへの恐怖に気持ちがスライドしていたんだ
鬱もちの相方は、すげえヒステリーで手が付けらないときがあってよく泣かされたや。
そんな時は、ボクは相方の家族や周囲にとばっちりがいかぬよー自分が盾になってた。
ボクに対して、ストレスのはけ口を仕向けることが多かったし、そうすれば取りあえず収まった。
だけど、相方の地雷を踏まないように、機嫌を損ねないようにと、そんなことをしていると
いつからなのか、消化不良なモノを心を常に抱えながら、おかしいのは自分だと錯覚するように。
ボクはそのときに、相方に抱かれ、愛されることは、この先も二度とないなと悟ってたや。
その反面、お前は家族で大事なヤツだという相方の言葉に縋っている女々しい自分がいたり。
ボクってね、矛盾しているんだ。
本当は、寂しくてたまんねえことに気がついてほしかった
長いあいだ、声にならない気持ちに気がついてほしかった
温もりが欲しくって、他の男と寝ても、なーんも解決しなかった。
逆に男とやって、それもたった数回でポジったことで、ますます自己嫌悪に陥ってしまっていった。
なあ、今までそんなこと言ってもくれなかったのにどうしてなの?
なんか、涙が出てきちゃったよ
一人前の、人らしい扱いをしてくれて心からありがとう。
ガサツで、鈍感で、短気で男らしい、そんなあなたがボクは大好きでした。
相方さん、年を取ったんだと思ったよ。
ある本に感銘を受けたらしく、人の見方や自分の至らなさに気がついたそうなんだ。
ピンチになって、いろんなことが見えて、相方にとってそれはいいことなんだと思う。
だけど、俺のことはもーきっと相方の目には映ってない。
この先、もしも結婚しよーが、男を作ろうが、そしてその二つを同時にしよーが祝福してあげたい。
そのときは笑っておめでとう!と言ってあげられるだろう。
家族でいること、戦友でいることはできるから、
だから、自分のせいだって責めたりすんのはもう止めようと思った。
はっきりと答えが出る日を待つのは、苦しくてしかたないけどそれでいい。
こんなにも心に平穏を感じたことは、いまだかつてなくて。
おやす眠。